相手のショットに対応する「判断」



 これまでの記事で説明をしてきたように、テニスの試合での守備力を向上させるためには、第一に”相手のショットを予測する力”を高めることが大切です。

 しかし、いくら予測が上手にできるようになったとしても、その後の相手のショットに対しての対応が上手くいかなければ、当然のことながら守備力の向上は望めません。

 従って、さらなる守備力の向上をはかるためには、”相手のショットに対応する力”を高めることが必要になってきます。

 この”相手のショットに対応する力”を項目に分けて考えてみると、下記のようになります。

 ・判断

 ・反応

 ・スタート

 ・フットワーク

 ”相手のショットに対応する力”を高めるということは、上記のそれぞれについて向上するということです。

 そこで、今回からは、”相手のショットに対応する力”を向上させるために必要な上記の4つの項目について、順を追って説明をしていきたいと思います。


 まず、今回の記事での説明は、”判断”についてです。

 この判断というものは、実際に相手がショットを打った瞬間から始めるものです。

 相手がショットを打つ直前までに予測が終わり、相手がボールをラケットで捕らえた瞬間から判断が始まるということになります。

 もちろん、予測に関しては、相手のショットが打たれる前に行なうわけですから、当然外れてしまうこともありえます。

 これを、確率良く当てられるようになるためには、前回までに説明してきたような多くのデータを用いて、それまでに積み重ねてきた経験を余すことなく活用して行なう必要があります。

 これには、多くの経験を積むことで知りえたデータを統計的に整理して頭に入れて置くことや、相手の僅かな違いを見抜く観察眼を養っていくことが重要です。

 故に、予測の力は多くの場合レベル差に関係してくるものです。

 しかし、判断に関しては、実際に相手のショットを見て行なうものですから、当たり外れのあるものではないと考えられます。

 ところが、通常この判断というものは、相手がショットを打った瞬間から始まり、自分がそのボールを打つ直前まで何度も行なわれるものです。

 しかも、この判断には、常に予測の要素も含まれています。

 従って、この判断についても当たり外れは当然ありえます。

 見たままを判断するのだからレベル差に関係が無いのかといえば、そうではないのです。

 それでは、具体的にどのような手順で判断がなされて行くのかの例をあげてみます。

 まず、相手のラケットがボールに対してどの程度のスピードで接触したのかを見ることで、およその相手のショットのスピードを判断します。

 次に、そのラケットがボールに対して接触してくる軌道と振りぬかれる軌道からショットの球種を判断します。(これは、例えば、ボールに対して下方から接触し、上方へ振り抜かれたのであれば、トップスピンであり、逆であれば、スライスであるというように)

 また、相手のラケットからボールが離れていく軌道を確認して、その方向と高さを判断します。

 ここまでは、予測の要素はなく、実際に目で見たままの判断ですが、この後にそのボールがどこにどの程度のスピードでどのような軌道で到達するのか、または、どのようなバウンドをするのかをここで見た情報をもとに予測する必要があります。

 そして、実際の打ち出されたボールを見ながら、難しい判断を迫られるような場合であれば、そのボールを打ち返す直前までさらに判断を修正しながら繰り返し、そのボールに対する位置取りや、スイングの軌道、タイミングを調整していきます。

 これだけを考えれば、予測の要素も含まれてはいますが、現実に起こっていることを見て判断に修正を加えながら対応しているだけです。

 従って、予測が多少間違ったとしても判断の力に差が出るようには思えないところですが、この判断で大きな問題になるところは、その判断の速さと予測を含めた正確さです。

 この点が、選手のレベルに大きく関係してくるところだと思います。

 まず、速さというのは、相手の打点からボールが離れて何センチ移動したところで判断ができたのかということです。

 この判断がなされた時のボールの位置が相手の打点に近ければ近いほど、有利になることはわかりやすいところだと思います。

 これは、動体視力にも関係してくるところだと思いますが、相手の打点を注視し、なるべく早い段階で判断できるように訓練をしなくてはいけません。

 次に予測を含めた正確さについてですが、良い選手は、相手によって打たれたボールが到達されるだろう場所へ先回りをして位置を取ります。

 これは、相手の打点からボールが離れた瞬間から始まった判断が早い段階で終了したことを意味します。

 当然理想的なスイングをボールの後ろに作るためにはそのスイングにかかる時間が必要になります。

 いつまでも相手の打ったボールとともに動き、判断を修正し直しているようでは、その時間を作ることができません。

 従って、判断が終わらずにいつまでも自分の位置が定まらないようであれば、満足の行くスイングを作ることができないということになります。

 もちろん、その判断が不正確なものであればいくら早い段階で判断が終了したとしても、ショットを打つ段階になって、フォームを崩す危険は否めません。

 故に、これについても、相当の経験と訓練を積み重ねる必要があるということです。

 判断の力を向上させるためには、できる限り早い段階で判断を始め、できる限り早い段階で判断を終わらせて、しかもその判断が正確であるようにそのための訓練を意識して行なうことが大切です。

 これは、こういった意識を持って、すべての練習に取り組んでいれば、確実に向上していくものです。

 常に相手のボールが到達するだろう場所へ、先回りをしてからショットを打つことができるように、相手がショットを打った瞬間にそのボールがどこにどのような軌道、どの程度のスピードでバウンドするのか、また、バウンドの軌道や回転による変化はどうなりそうかを判断する習慣を身につけなくてはいけません。

 この訓練が積み重なることで、判断の力は必ず向上するはずです



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