相手のショットを予測する「セオリー」



 今回の記事では、テニスの試合中に”セオリー”のデータを利用して相手のショットを予測する方法について説明をしたいと思います。

 当然のことですが、”セオリー”のデータを利用するためには、まず、”セオリー”を覚える必要があります。

 しかし、このセオリーを覚えることが意外と大変なことであったりします。

 まず、”セオリー”とは、”理論”を意味する言葉ですが、ストロークやボレーなどのフォームについても理論は存在しますし、フットワーク、ポジショニングなどについても理論が存在します。

 そして、配球のセオリーは、これらの理論を踏まえた上で考えられているものです。

 従って、テニス全体に関して言えば、到底数えることができないほどのセオリーが存在しています。

 これらのすべてを熟知するためには、相当の経験と努力が必要です。

 例えば、”配球に関するセオリー”は、攻撃の際のセオリーと、守備の際のセオリーに分けることができます。

 そして、攻撃の際のセオリーは、ベースラインからのセオリーとネットプレーでのセオリーなどに分けられ、また、ベースラインからの攻撃のセオリーは、ストレートからの展開、クロスからの展開などに分けられ、また、ストレートからの展開であっても、相手のボールが深いときと、浅いときでは違いがあり、相手のボールのバウンドが高くなるときと低くなるときでも違います。

 もちろん球種によっても違いがでてきますし、相手や自分のポジションによっても違いがあります。

 また、グリップの握り方や、バックハンドがシングルハンドかダブルハンドか、相手の身長が高いか低いかなど数え上げれば限がありません。

 このようなことが、守備をする際のセオリーにも当てはまるわけですから、”配球に関するセオリー”だけでも、いかに多くのセオリーが存在するか想像できると思います。

 簡単にまとめれば、”配球に関するセオリー”とは、どのようにすれば試合に勝つ可能性を高められるのかを、それぞれの状況において確率と統計から導き出した配球の手筋のようなものです。


 テニスの試合に勝つためには、第一にミスを減らさなくてはいけません。

 従って、”配球に関するセオリー”の半分は、それぞれの場面でミスを減らすための理論です。

 ここでいうミスというのは、ショットのネットやアウトなどのコントロールミスだけではなくて、位置取りのミス、配球のミスなども含まれます。

 ”ショットのミスを避けるためのセオリー”は、この場面でこのコースにこういった球種で打つと、ショットのミスを犯しやすいなどの確率論から導かれたものです。

 ”位置取りのミスを避けるためのセオリー”は、この場面ではここで待っているべきだという”ウェイティングポジション”を特定する理論であり、相手がショットを打つ際に自分のウェイティングポジションを最適な位置にするための、配球、フットワークを含めた理論です。

 ”配球のミスを避けるためのセオリー”は、この場面でそこにボールを打つと、自分が不利になる可能性を示しています。

 また、テニスの試合に勝つためには、ただ単にミスをしなければ良いわけではありません。

 テニスは相手にミスをしてもらえなければ、決着がつかない競技です。

 そこで、”配球に関するセオリー”の残り半分は、相手を不利にさせ、自分が有利になるための配球の選択についての理論ということになります。

 何度も繰り返しますが、これらのすべてを含めてセオリーと考えることになりますから、実際のセオリーをすべて覚えるためには、相当の経験と学習が必要となります。

 従って、通常、このセオリーのうちの幾つかであれば知っているという人は多いと思いますが、セオリーすべてについてよく理解をしている人は少ないと考るほうが普通です。

 当然のことですが、”セオリー”のデータを利用して相手のショットを予測する条件としては、自分も相手もその場面での”セオリー”を知っている必要があります。

 相手の配球が”くせ”によってやっているものなのか、”得意不得意”によるものなのか、”セオリー”によるものなのかの判断を正確にできないと大きく結果に関わってきます。

 ここまでに説明をしてきた小項目の中で、”相手のコースや球種に対する得意不得意”や”相手の配球のくせ”のデータを利用した予測に関しては、相手の配球は、ただ単に相手がやりやすいようにやっているだけで、そこに理論は存在していませんから、”セオリー”のデータを用いた予測とはまるで違った種類のものです。

 しかし、”相手がコートのどこから打ってくるか”や”自分がコートのどこにいるか”などの項目を利用した予測に関しては、相手は理論を基に配球をしてくるわけですから、これは”セオリー”による予測に近いものかもしれません。

 ”セオリー”のデータを利用した予測を確実にするためには、自分自身の経験と学習も必要ですが、相手のレベルにも注意を払わないといけないということです。

 お互いに高いレベルでの試合ができるようになったときには、大変効果的な予測方法ですが、相手のレベルによっては、”相手のコースや球種に対する得意不得意”や”相手の配球のくせ”のデータを利用した予測のほうが確実であることもしばしばです。

 試合においては、相手のセオリー熟知レベルの判断を間違えず、この方法だけに捉われず、必要に応じて他の方法に切り替えることを忘れないようにしてください。


 最後にひとつだけ配球の手筋についてのセオリーをご紹介したいと思います。

 まず、選手Aが、クロスに深く大きなバウンドをするショットを打ち、相手の選手Bをコート後方に下げます。

 そのボールに対して選手Bがクロスに返球してきたら、次に、選手Aはクロスへ短い角度のついたショットを打ち、選手Bをベースラインの前方でサイドラインの外側に追い出します。

 このボールに対して選手Bがクロスへ返球してきたのなら、選手Aは次の返球をストレートに速いタイミングで攻撃をします。

 このボールに対して選手Bは斜め後ろへ下がりながら返球することになりますので、選手Bのショットは甘くなる可能性が出てきます。

 そこで、選手Bの状況が十分でなければ、選手Aはネットへ詰めてその返球をボレーで仕留めます。

 これは、選手Aがクロスに打った長短の2本のショットに対して選手Bがクロスに返球してくることが条件です。

 選手Bが違ったコースにショットを打ってくれば、通常そこからはそのショットに応じたセオリーに変更されます。

 また、選手Bが打ってきたボールが、選手Aが次のコースに打ち切れないようなショットであれば、この配球のセオリーは選手Bによって打破されたということになります。

 ただ単に配球の順番だけを覚えることがセオリーを覚えることではありません。

 この配球の手筋には、各ショットの順番にポイント取得のための理論があります。

 選手Aがストレートにショットを打つ場合、選手Bが余裕を持って返球してこれるようであれば、選手Bはショートクロスへ角度のついた厳しいショットでカウンター攻撃をしてくる可能性があります。

 このようなことであれば、選手Aはコートの端でストレートへのショットを打った後、選手Bが打つコートの外に逃げていくボールを追いかけなくてはいけなくなりますから、当然、攻撃したつもりが立場は逆転してしまいます。

 そこで、通常は、ストレートに打つ前にショートクロスのショットなどを先に打ち、選手Bをコートの外へ追い出してからストレートに打つことで、選手Bに十分な余裕を与えないようにしてこのような危険を回避するべきです。

 しかしここで注意をしなくてはならないことですが、ショートクロスというショットは、短いボールです。

 選手Aのこのボールに対して、選手Bが余裕を持って返球できるようであれば、このボールはただの浅いチャンスボールになってしまいます。

 しかも選手Bはコートの端からショットを打ってきますから、スペシャルな角度をつけて打つことが可能です。

 これが意味することは、選手Aが守らなくてはいけない範囲がクロス側に大きく広がるということです。

 しかも、選手Bは選手Aのコートに対してほど近いところからショットを打ってくるわけですから選手Aには十分な時間がありません。

 当然、守りきることは難しくなるでしょう。

 このようなことを避けるためには、基本的にショートクロスへのショットは自分が有利になれるときに使うべきです。

 先ほどの例で、選手Aがショートクロスのショットを打つ前に、選手Bを後方に下げるバウンドの大きな深いショットを打ったのはそのような理由があってのことです。

 そして、ストレートのショットの後にネットへ詰めるということは、ポイントを取れるチャンスを確実にものにするために非常に大切な行動です。

 もしも選手Bがゆっくりとした深いボールで返球をしてきた場合に選手Aがベースラインで待っていたら、そのボールが選手Aのコートに到達するまでの間に、選手Bは最適なウェイティングポジションへ戻ってしまいます。

 せっかく3本のショットを組み合わせて選手Bを崩しても、これでは再び最初からやり直しです。

 だからといって、2本の長短のクロスのショットの後に慌ててネットに詰めたところで、選手Bが崩れていなければ切り返されるリスクがあります。

 このようなことを考えると、このタイミングでの行動がポイントを取得するために、より確実性のある形であることが理解できると思います。

 ”セオリー”のデータを利用して相手のショットを予測するということは、以上のような配球の意味合いを良く理解して初めて成り立つものです。

 ”セオリー”による配球を正確に行なえるということは、相当の経験と学習が必要であることが理解できたことと思います。


 今回の記事までの説明は、自分がショットを打った直後に行なう”相手のショットに対する予測”についてでした。

 次回以降は、これによる予測をより確実なものにするための、自分が打ったショットに対して、相手がショットを打つ直前に行なう予測方法を説明したいと思います。

 まず、次回の記事では”自分のショットに対する相手の位置取り”のデータを基に予測をすることについて説明したいと思います。



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