人それぞれの作戦



 これまで説明してきたように、テニスの試合に勝つためには作戦を良く考えてプレーすることが最も大切なことです。

 しかし、技術力が低ければできる作戦には限界があります。

 これは、人それぞれに得意、不得意があるのですから、その人の各ショットの技術力の段階によって、実行可能な作戦は異なるということです。

 簡単に言えば、自分の技術に見合った作戦を立てることが、その作戦を成功させるために最も必要なことだということです。

 そして、自分にとっての良い作戦というのは、その遂行において技術的に多少の余裕がある範囲で行えることが大切です。

 自分自身の技術力に対して限界ぎりぎりの作戦では、実戦で安定して成功させることは難しくなるでしょう。

 テニスの試合で要求される集中力や注意力は、自分自身の技術に対するものだけではなく、相手の行動や、自分のおかれている状況(コート上の何処にいて、相手コートまでの距離はどのくらいか、風はどのように吹いているか、コートのサーフェイス(材質)によるバウンドの仕方はどうか...etc.)に対するものまで、実に幅広い範囲に及びます。

 あまりにも高度な作戦を立ててしまえば、自分自身のことで頭がいっぱいになってしまい、その他の”注意が必要なこと”に気が回らなくなってしまうかもしれません。

 テニスの試合で大切なことは、自分の外部に対する注意が完全になされた上で、その状況に応じた技術を成功させるために集中することです。

 簡単に言えば、”良いフォームで打つ”ということだけでは不十分で、”その状況に合った良いフォームで打つ”ということが大切なのです。

 例えば、ひとつ例を挙げれば、非常に精密な失敗の許されない作業をしているとします。(縫い針の穴に糸を通すような)

 おそらくこの際に目の前の作業に完全に集中していれば、自分の背後で起こっていることなどは気にならないでしょう。

 このような集中の仕方では、テニスの試合においては自分の外部に対する注意がおろそかになっているわけですから、不十分だということです。

 また、テニスの試合での具体例を示せば、追い風の中、パッシングショットを打とうと思って、自分の打てる最高の速度のショットを打ったとします。

 この時、ショットの速度とその飛んでいく方向に意識を最大限に集中させていたので、大変加速した強いスイングをしたにも関わらず、ラケットを正確にコントロールができ、コース、スピードともに大変満足のいけるボールが飛んでいったとします。

 しかし、ショットの速度とその方向を正確にコントロールするために、そのためのフォームを乱さないことだけに意識を向けていて、追い風が吹いていることを考慮していなければ、アウトしてしまうといった危険も有り得ます。

 また、試合でのラリー中に相手のボールが甘くなり、決定的なチャンスがやってきたとしましょう。

 このチャンスを絶対に掴みたいと思い、自分にとって精一杯のスピードでコースも厳しく、しかも相手の逆をついて打ちました。

 ところが、逆を突いて打ったつもりが、相手はすでにあきらめていて、決定的なチャンスに相手のいるところへ打ってしまうということになり、その結果、切り返されてしまったなどということもまた有り得ます。

 自分の内面だけに極度に集中し、正確な状況判断ができなくなれば、このような”ちぐはぐな結果”につながる可能性も増えてきてしまいます。

 だからといって、限界ぎりぎりのショットを打とうとしながら、相手の状況、自分の状況などの種々のことに気を囚われてしまえば、そのショットの成功する確率が下がってしまうでしょう。

 当然のことですが、もともと限界ぎりぎりのプレーは、ミスをする確率が高いと考えられます。 

 その上、試合にとって大切な”状況判断”が正確にできなくなれば、勝てる可能性はますます下がってしまいます。

 このことが、テニスの試合では、自分の力量に対して70%から80%のプレーを乱さず続けることが、最も良い結果につながりやすいといわれる理由です。

 この20%から30%の余裕が、ミスを減らし、状況を正確に把握し、判断をするために必要な部分であるのです。

 従って、他人にとっての70%と、自分にとっての70%のプレーは異なるわけですから、他人にとっての良い作戦と、自分にとっての良い作戦は、その力量が違えば同じく異なるものだということをしっかりと理解する必要があります。

 もちろん、他人のプレーを見ていて、良い作戦だと思ったものがあったとして、それが、自分の力量に対して多少の余裕があるのであれば、積極的に取り入れてみることは良いことだと思います。

 また、良い作戦だと思うけれども、限界に近いとか、少し無理があるなどと感じるのであれば、今すぐには使えないかもしれませんが、その作戦を多少の余裕を持って使えるようになるための訓練を積んで実行可能なものに近付けていくことも良いことだと思います。

 ただし、余裕を持つということは、”甘いボールを打つ”ということではありませんので、誤解をしないようにしてください。

 余裕を持つということは、例えばスピン量を多くするなどして、アウトし難い球筋を実現し、ネット上を通過する際に余裕のある高さを狙えるようにするなどの工夫をすると考えてください。

 ライン際にバウンドしなくとも、ネットぎりぎりの高さを通らなくとも”甘くないボール”はいくらでもあります。

 テニスの試合に勝つためには、甘くないボールを打ち続けることが大切で、作戦上「甘いボールを打つ」という考えは持つべきではありません。

 どうしてもミスをしてはいけない場面で、「深く丁寧にコントロールしようとしたが、甘くなってしまった。」と、作戦を考える上で弱気になってしまい、「ミスをしないように甘くしよう。」ではまるで意味が違います。

 特に、レベルの高い相手と試合をするのであれば、自分のベストをいかに試合にだせるかが勝負に大きくかかわってくるのですから、”弱気な作戦”ほど、ベストパフォーマンスを邪魔する悪はないと考えてください。

 自分の技術で成功させられる範囲で相手に対して効果的である作戦が、”自分が試合に勝つための作戦”であって、自分の技術力では成功の確率が低いとか、その相手に対して効果の乏しい作戦は、”試合に負ける作戦”であるといえます。

 「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。」という有名な言葉がありますが、自分のことばかりで、敵の力量(強いところ、弱いところ)を考えずに作戦を立てても何の意味も効果も無く、自分の力量を正しく判断できずに無理な作戦を立てても自滅するだけであると、よくよく肝に銘じてください。

 以上のことを良く理解して、自分を活かせる良い作戦を立てられるように日々考えを高めてください。

 自分のプレーを生かすも殺すも自分の作戦の立て方しだいです。



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